医療広告ガイドライン
医療広告ガイドラインの違反事例12:歯科のサイト・SNS・広告でよくあるNGと直し方
この記事のポイント
- 厚生労働省の事例解説書(第6版)とQ&A(令和8年3月改定)には、歯科の違反事例が多く載っている
- 多いのは、根拠のない数字・言い切り、加工した写真や説明のないビフォーアフター、口コミの転載・選別、誤認させる名称
- 直し方の基本は、根拠を示せない表現を使わない、写真には治療内容・費用・リスクを同じ場所に書く、口コミを選んで載せない
医院のホームページやInstagram、広告を作るとき、「この表現は大丈夫だろうか」と迷うことは少なくありません。迷ったときの一番の手がかりは、厚生労働省が実際の事例をもとにまとめた資料です。
この記事では、厚生労働省の「医療広告規制におけるウェブサイト等の事例解説書(第6版)」と「医療広告等ガイドラインに関するQ&A(令和8年3月改定)」から、歯科医院で起こりやすい違反事例を12個選び、なぜNGなのか、どう直せばよいかを整理します。ガイドライン全体の考え方は、医療広告ガイドラインのまとめをご覧ください。
本記事は公開資料の整理です。個別の表現が問題になるかどうかは、医院を所管する自治体(保健所など)にご確認ください。
根拠のない数字・言い切り
1. 「1日ですべての治療が終わります」(インプラント)
事例解説書では、インプラント治療について「1日で全ての治療が終了します」と表示した例が虚偽広告とされています。実際には定期的なメンテナンスなどが必要なのに、短期間ですべて終わるように書いているためです。 直し方:治療の流れと、治療後に必要な通院・メンテナンスを含めて書きます。
2. 「インプラント手術の成功率は97.5%」
調査方法などを示さずに、成功率の数字だけを載せた例も虚偽広告とされています。都合のよい結果だけを示していると受け取られるためです。 直し方:数字を出すなら、出典・調査した主体・対象の範囲・時期などをあわせて示します。示せないなら載せません。
3. 「2週間で90%の患者さんに効果」
Q&Aでは、治療効果を数値で示すこのような表現は広告できないとされています。効果は患者さんの状態によって異なり、誤認を与えるおそれがあるためです。
4. 「痛くない治療」
Q&Aでは、「痛くない治療」は科学的な根拠がなく、虚偽・誇大広告のおそれがあるため広告できないとされています。一方で「歯を削らない治療」は、削らなくても適正な医療を提供できる範囲であれば広告できるとされています。「満足度99%」のような数字は、求められれば合理的な根拠を示して客観的に実証できる必要があります。
5. 「審美治療」
Q&Aでは、歯科の「審美治療」という表現は、さまざまな治療が含まれ、何を提供するのかが明確でないため広告できないとされています。ただし、患者さんが自ら求めて見るウェブサイトなどで、限定解除の条件を満たせば載せられます(限定解除とは)。ホワイトニングは、承認された医薬品を使い、自由診療である旨と標準的な費用を書けば広告できるとされています。
写真の使い方
6. 加工・修正した治療前後の写真
ホワイトニングの例で、素材写真を分割して片方だけを修正した画像を載せた例が虚偽広告とされています。
7. 説明のないビフォーアフター写真
インプラントの症例写真に「審美面・機能面ともに回復しました」「治療費は1,500,000円〜」とだけ書いた例は、治療内容・期間や回数・費用・リスクや副作用などの説明が足りず、広告できないとされています。写真の横に、これらの詳しい説明を付ける必要があります。
8. 説明がクリックした先やリンク先にしかない
症例写真をクリックしないと説明が出ない例、写真には説明がなく料金ページへのリンクだけがある例も、認められないとされています。説明は写真と同じ場所に、読める大きさで載せます。手術の「前だけ」「後だけ」の写真も、Q&Aでは同じように扱うとされています。写真の扱いはビフォーアフター・体験談・口コミの線引きで詳しく整理しています。
口コミ・体験談
9. 口コミサイトの口コミを転載・抜粋する
口コミサイトにあるインプラントやホワイトニングの口コミを、全件転載したり、医院に有利なものだけを抜き出して載せたりした例は、体験談の掲載(禁止)や誇大広告にあたるとされています。
10. 口コミの編集を依頼する
医院の依頼で、口コミサイトの運営者が否定的な口コミを削除・改編し、肯定的な口コミを残した例も禁止とされています。なお、名誉毀損などにあたる口コミの削除を依頼すること自体は、医療法違反にはあたらないとされています。
名称・肩書き・比較
11. 「△△インプラントセンター」という名称
歯科医院の名称に「インプラントセンター」を使う、または医院名と併記する例は誇大広告とされています。「センター」は、法令や国の事業に基づく機関など、限られた場合にしか使えません。
12. 「国の認証を取得」「厚生労働省に認定」
「口腔管理体制強化加算」などの届出をしたことを、「国の認証」「厚生労働省に認定」と書いた例は誇大広告とされています。届出は認定や認証ではないためです。改善例として、届出をしている旨だけを書く形が示されています。
ほかにも、「〇〇市の他の医療機関と比べて成功率が高い」といった他院との比較や、「モデルの〇〇も効果を実感」のような著名人との関係の強調は、比較優良広告とされています。
違反を防ぐための3つの習慣
- 言い切りと数字は、根拠を示せるものだけにする:「必ず」「痛くない」「1日で完了」「成功率〇%」は、根拠を出せないなら使いません
- 写真には説明を同じ場所に付ける:治療内容・期間や回数・費用(自由診療である旨)・リスクや副作用を、写真と一緒に読める大きさで書きます
- 口コミは選ばない・頼まない:医院のサイトに口コミを抜き出して載せない、口コミの投稿や編集を依頼しません
私たちが広告やLPを制作するときも、公開前にこの観点で表現を見直しています。迷ったときは、医院を所管する自治体(保健所など)に相談できます(Q&AのQ5-1)。
参考資料
- 厚生労働省「医療広告規制におけるウェブサイト等の事例解説書(第6版)」:https://www.mhlw.go.jp/content/001683116.pdf
- 厚生労働省「医療広告等ガイドラインに関するQ&A」(令和8年3月改定):https://www.mhlw.go.jp/content/001683595.pdf
よくある質問
「痛くない治療」と書くのは違反ですか?
厚生労働省のQ&Aでは、「痛くない治療」は科学的な根拠がなく、虚偽・誇大広告のおそれがあるため広告できないとされています。一方、「歯を削らない治療」は、削らなくても適正な医療を提供できる範囲であれば広告できるとされています。
治療の成功率や満足度の数字は載せられますか?
調査方法などを示さずに成功率だけを載せる例は、事例解説書で虚偽広告とされています。満足度などの数字は、求められたときに合理的な根拠を示して客観的に実証できる必要があります。治療効果を数値で示す表現(例:2週間で90%に効果)は広告できません。
医院名に「インプラントセンター」と付けてもよいですか?
事例解説書では、歯科医院の名称に「△△インプラントセンター」を使う、または医院名と併記する例が誇大広告とされています。「センター」は、法令や国の事業に基づく機関など限られた場合を除き使えないと考えてください。